東京高等裁判所 昭和55年(ネ)2230号 判決 1983年9月14日
控訴人(控訴審反訴原告) 乙野花子
被控訴人(控訴審反訴被告) 甲野太郎
主文
本件訴訟(予備的反訴も含む。)は昭和五七年二月八日被控訴人(当審反訴被告)が死亡したことにより終了した。
事実
第一当事者の申立
一 本訴請求につき
1 控訴人(当審反訴原告、以下控訴人という。)
(一) 原判決を取り消す。
(二) 被控訴人(当審反訴被告、以下被控訴人という。)の請求を棄却する。
(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
本件控訴を棄却する。
二 当審における予備的反訴請求につき
1 控訴人
(一) 控訴人が被控訴人とその妻である訴外亡甲野はるの養子であることを確認する。
(二) 訴訟費用は被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
(一) 控訴人の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は控訴人の負担とする。
第二
一 本訴についての当事者双方の主張は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
二 控訴人の主張
被控訴人は昭和五七年二月八日に死亡した。
第三予備的反訴についての当事者の主張
一 請求原因
1 仮に控訴人と被控訴人及びその妻の亡はるとの間に親子関係が存在せず、控訴人が被控訴人夫婦の長女である訴外丙野なつと訴外丁野一郎との間の実子であるとすれば、控訴人と被控訴人夫婦との間に養親子関係が存在している。
2 すなわち、被控訴人夫婦は昭和一四年六月二日、控訴人との間に真実の親子と同一の関係を成立させる目的をもつて、被控訴人において控訴人を嫡出子(六女)とする出生届をし、生活を共にしてきたので、右届出は養子縁組届と同一の効力をもつものである。
3 よつて、控訴人は、被控訴人の本訴請求が認容されるときは、予備的に、控訴人と被控訴人夫婦との間に養親子関係が存在する旨の確認の裁判を求める。
二 請求原因に対する認否
請求原因事実中、出生届の事実は認めるが、養親子関係の存在は争う。
第四証拠関係<省略>
理由
一 その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第五号証によれば、被控訴人は、本件訴訟が当審に係属した後である昭和五七年二月八日に死亡したことが認められる。
二 ところで、親子関係不存在確認を求める権利は、一身に専属する権利であつて、相続の対象となりえないものと解すべく、しかも親子関係不存在確認訴訟を提起した後、原告となつた者が死亡した場合に、その訴訟を承継させるものと解される趣旨の規定がないので、当該訴訟は右原告の死亡と同時に終了するものと解するのが相当である。
したがつて、本訴請求(親子関係不存在確認)訴訟は被控訴人(第一審原告)の死亡の日である昭和五七年二月八日に終了し、予備的反訴請求(養親子関係存在確認)も、その性質上、これに伴つて当然に終了したものというべきである。
なお、親子関係不存在確認訴訟の係属中に、原告となつた者が死亡した場合、人事訴訟手続法第二九条第三項を準用して、同条第一項所定の者が当該訴訟を承継することができると解すべきであるとしても、この場合には、同条第二項に則り、右原告の死亡の日から一年以内に、訴訟承継の申立をなすべきものであるところ、本件訴訟については、被控訴人(第一審原告)の死亡の日から一年内に右申立がなされていないことは当裁判所に顕著である。してみれば、本件の場合右法条を準用する余地はなく、前記説示のように、本件訴訟は終了したものといわざるをえない。
三 よつて、本件訴訟は、予備的反訴も含めすべて昭和五七年二月八日に被控訴人の死亡により終了した旨の宣言をすることとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木潔 鹿山春男 河本誠之)